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健康食品、品質は大丈夫? 国立研究所、103製品分析
「健康にいい」とうたわれている健康食品だが、質の悪い製品も出回っている。その実態の一部がこのほど、専門家の分析で明らかになった。買おうとした人が外装の表示を見ても優劣を判別できず、国の規制も不十分だ。健康食品を購入するなら、注意点を知っておこう。
■2割、表示成分含まず
分析したのは、国立医薬品食品衛生研究所の合田幸広・薬品部長だ。2005~12年、国内で流通する健康食品のうち、103製品を分析した。その結果、21%にあたる22製品で、表示されている成分が含まれていなかった。
対象とした表示成分は「コンドロイチン硫酸」「イチョウバ」など10種類だ。
例えば、女性ホルモンのような作用があるといわれる「プエラリア」は、表示のある17製品のうち9製品で含まれていなかった。
また、103製品の12%にあたる12製品では、表示されていない成分が混入していた。例えば、目に良いとされる「ビルベリー」の表示がある製品に、より安価な原材料が入っていたが、その表示はなかった。
合田部長の別の研究でも、質の悪い健康食品の存在が明らかになっている。
08~13年度、「グルコサミン」「イチョウバ」などが表示された32製品(カプセル・錠剤)について行った調査だ。腸内で吸収される状態に形が崩れるかを調べると、半数の16製品で形が崩れなかった。崩れなければ、吸収されずにそのまま排泄(はいせつ)される。
これらの結果から、合田部長は「利幅を増やすために粗悪品を作る業者がいる可能性を捨てきれない」と話す。
日本健康食品規格協会の池田秀子理事長は「メーカーに十分な技術力がないことも要因の一つ」と指摘する。カプセルや錠剤は、有効成分に添加物を混ぜ、圧力をかけるなどして作られるが、混ぜ方や圧力のかけ方が悪いと、成分にばらつきが出たり、体内で崩れなかったりするという。
国内で健康食品は2万種類あると言われている。合田部長の調査は、主に医薬品の規格作りを目的に、ごく一部の製品を調べただけだが、低品質な商品が出回っている現状がデータで裏付けられた。消費生活アナリストの板倉ゆか子さんも「業界全体で見ても実態は同じだろう」とみる。
■国、有効な規制策なし
なぜ低品質な製品が出回っているのか。
健康食品の中でもトクホ(特定保健用食品)には一定の規制がある。健康増進法や関連規定で、発売前に人に製品を食べてもらう実験をし、そのデータに基づいて国が有効性や安全性を確認することなどが決まっている。
しかし、トクホなどを除く多くの健康食品は、一般食品と同じ扱いとなる。食品衛生法やJAS法で、衛生面や製造元の記載などは義務づけられているが、他の特別な規制はなく、企画製造から販売まで企業判断に任されている。そのため、低品質な商品があっても、国は把握できない。
板倉さんは「技術力が低くても、もうけ主義で低品質なものを作っても、製品が流通してしまうのは問題。監視が追いついていないので、規制強化を求めたい」と話す。
一方、国は、健康食品が体にどうよいのかを示す「機能性表示」の新制度を作ろうとしており、検討は大詰めを迎えている。表示する場合、成分量を確認し、品質管理の方法を情報公開するなど一定の品質条件を企業に求める方向だ。
たとえば、これまでは「季節の変わり目に目や鼻が気になる方に」などとあいまいな表示しかできなかったが、新制度では「メチル化カテキンを含んでいるため、花粉が気になる方の目や鼻の調子を整えます」などと直接的な表現ができることになる。
それでも、直接的な表現をするかどうかは企業の判断。健康食品全体の品質を正す効果は低いとみられる。
■選び方のポイントは 成分名・含有量を参考に/GMPマークも目安
「バランス良く通常の食事をとっていれば、栄養がそれほど不足することはありません」。厚生労働省はリーフレット「健康食品の正しい利用法」=表=でこう説明している。
注意点としては「成分名や含有量を見る」を挙げている。表示で品質の優劣がわかるわけではないが、手がかりにはなる。また、「薬と併用しない」ことも大切だ。薬の効果が弱くなったり、副作用が強まったりすることがあるからだ。体験談が捏造(ねつぞう)されている可能性もあるので信じすぎないようにしよう。科学実験とは違い、それだけで有効性の証明にはならない。
また、厚労省は製品の一定の品質を保つための製造工程管理基準(GMP)を設けている。基準を満たす工場を日本健康食品規格協会と日本健康・栄養食品協会が認証する。企業は認証工場で作られた製品に、協会ごとのGMPマークをつけることができ、消費者にとっては品質の見極めに役立つ。両協会によると、5月までに認証された工場は135、マークのついた製品は420あるという。
健康食品の問題に詳しい高橋久仁子・群馬大学名誉教授は「『おいしくうるおう コラーゲン入り』と書かれた商品の製造元に表示の意味を問い合わせると、肌ではなく、のどがうるおうだけと回答した企業も実際にあった」と明かす。「広告で書かれたことを超えてイメージをふくらませず、明確に書いてあることは何かよく確かめて下さい」 (小林未来、編集委員・大村美香)
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